東京地方裁判所 昭和44年(借チ)29号 決定
〔主文〕1、申立人が、相手方に対し、本裁判確定の日から三月以内に金一六二万円を支払うことを条件に、本件土地賃貸借契約の目的を堅固建物所有に変更する。
2 前項により契約の目的が変更された場合、(一)契約期間を前項の金員が支払われた日から三〇年延長し、(二)賃料を借地のうち62.16平方米(東京都市計画事業放射第五号線街路に編入されない部分)につき右金員が支払われた月の翌月分から一平方米当り一ケ月二〇〇円に改め、その余の部分48.80平方米については従前のとおりとする。
〔理由〕(申立の要旨)
1 申立人は、相手方から、東京都新宿区四谷三丁目一一番二宅地160.13平方米(四八坪四合四勺)のうち110.96平方米(以下本件土地という。)を非堅固建物所有の目的で賃借中にして、期間は、昭和二三年六月一八日から昭和五三年六月一七日までであり、賃料は、昭和四三年一月一日以降一ケ月一万二、五〇三円である。
2 本件土地は、昭和二六年三月一九日防火地域の指定を受け、契約時は本件土地附近の建物はいずれも木造の建物であつたが、昭和四三年頃からビル等堅固建物が逐次建築されつつある。
3 本件土地のうち新宿通に面する48.80平方米は、東京都市計画事業放射第五号線街路に編入されているので、この部分には堅固建物を建築することはできないが、右のように、本件土地は堅固建物の所有を目的とするのを相当とするにいたつたので、右計画道路に該らない部分に堅固建物を建築する計画であるが、契約の変更につき相手方と協議が調わないので、本申立に及んだ。
(決定理由)
1 本件の資料によれば、申立人が相手方から本件土地を非堅固建物所有の目的で期間を定めずに賃借していること、賃料は、昭和四三年一月一日以降一ケ月一万二、五〇三円に改定され現在にいたつていること、賃貸契約成立の時期は、必ずしも明らかではないが、昭和二一年から昭和二三年の間であること、本件土地は、昭和二六年防火地域の指定を受け、附近には堅固建物が逐次建築されつつあることが認められるので、本件申立は、これを認容すべきである。
2 附随の処分
本件申立を認容するにあたり、申立人に財産上の給付を命ずるのが相当である。鑑定委員会は、財産上の給付につき借地人が支払うべき更新料を基礎にその額を算定しているが、賃貸人は、借地人に対し、更新料の支払を請求しうる権利を有しないのであるから、更新料を基礎に給付額を算定するのは相当でない。一方、鑑定委員会は、賃貸借契約の目的を非堅固建物所有に変更した場合、借地権価格が土地価格の一〇%を増加する旨の意見を提出している、右価格増加分は、財産上の給付として、申立人に支払を命ずるのが相当である。ところで、本件の資料によれば、本件土地中新宿通に面する48.80平方米は、東京都市計画事業放射第五号線街路に編入され、いずれは買収される土地であることが認められ、この部分には堅固建物を建築することはできないのであるから、契約の目的変更により借地権価格が増加するといつても、本件の場合は、本件土地中右計画道路に編入されない部分62.16平方米についてのみ借地権価格の増加を考慮するのが相当である。鑑定委員会の意見によると、本件土地の更地価格は一平方米二六万円とのことであるので、更地価格の評価については右意見に従い、財産上の給付額は一六二万円(万円未満四捨五入)を相当とする。
賃料についても、本件土地中計画道路に編入されない部分は従来どおりとし、その余の部分は、鑑定委員会の意見に従い、一平方米当り一ケ月二〇〇円に改めるのを相当とする。
なお、契約の目的変更に伴い、借地期間を主文のとおり変更するのを相当とする。(小山俊彦)